こちらのテレキャスター、82年製です。自分の感覚的に70年代以前がヴィンテージという気がしちゃうのですが、デジマートでは80年代もすっかりヴィンテージなのですね。つまり私もヴィンテージ…。
それはさておき、こちらも各部のエイジング具合がとてもカッコ良く、まさにヴィンテージの風格です。
今回のご依頼は
・ジャックソケットの取り付け
・プロントピックアップの音量アップ(ピックアップを弦に近づける)
の2点を作業しました。どちらもテレキャスターあるあるの内容でと思いますのでテレキャスユーザーの方はぜひご覧ください。
オリジナルパーツに拘らなければ是非交換したいのがジャックカップ。こちらのビス留め式のジャックソケットに交換がオススメです。
オリジナルは受け側を木部にめり込ませたパーツで留めているだけなので、ジャックナットの締め込みで徐々に木部がグズグズになり、ジャックが緩まってしまいます。そうなるとプラグがグラつき、音の途切れや断線の原因になってしまいます。
こちらのジャックソケット、取り付けの際は斜めにビス留めするのでちゃんとした下穴を開けることが重要ですし、意外と難しいです。間違っても下穴なしで取り付けない方が良いです。
また、残念なことに付属のビスは少し短いです。こう見ると結構飛び出しているので問題ないように見えますが、実際にはジャック穴とパーツ間に距離がありますのでビスが効く部分は3〜4mmほどでしょうか。
プラグの抜き差しで負荷がかかる部分で、それでは心もとないですので当工房で在庫している長めのビスにて取り付けします。
次は、フロントピックアップの音量が小さいとの事でそちらの作業へ進んで行きます。
同様のお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
パワーのあるピックアップへ交換するというアプローチもありますが、今回はシンプルにフロントピックアップを弦に近づけて音量アップを試みます。
テレキャスターの歴史を紐解くと、そのそもそういうバランスです。リアをメインで使い、フロントはリズムギターです。
画像のピントが思いっきり手前に来ちゃっていますが、こちらは1弦側の高さ調整ビスの下穴が斜めになっており、スムーズに高さの上げ下げができない状態でした。ですので一度埋めて垂直に開け直しました。
ピックガードの取り付けの下穴がズレており、このまま取り付けるとフロントピックアップを押し付けてしまい、これまたピックアップの高さ調整のスムーズさを妨げる要因の一つとなっておりました。
一度元の下穴を埋めました。一日乾燥後、正しい位置に開け直します。
ピックガードの位置を合わせて下穴を開け直し、ようやくピックアップの高さ調整へ。
『フロントピックアップの高さを上げる』という目的の為に今回は関連した周辺の下穴を全て修正する形となりました。
各部下穴の重要性と、修正の手間が意外とかかるのがお分りいただけたでしょうか。
ピックアップの高さ調整が完了し、ピックガードも正しく装着しました。写真だと全然伝わりませんが…笑
その他、電装系もご相談いただきまして、もう少しフロントPUの音も太くしたいとのことで、オーナー様のリクエストによりハイパスコンデンサーを敢えて外しました。
こうする事で少しボリュームを絞って弾いてもLow〜LowMidあたりは残ってくれます。その代わりHighは落ちます。この辺りは使い方と好みに合わせて変えていくべき部分だと思います。
因みにこちらのコンデンサーはいわゆる、サークルDってやつですね。
ナット溝調整前。
ナット溝調整後。ナット上面の余分のところを削り取り、成形します。
この後ネックの反り調整、ブリッジ部分での弦高調整、オクターブ調整を行い、アンプで音を出ていただきつつピックアップ高さの最終調整を行いました。
演奏性、サウンド共にオーナー様にお喜びいただき何よりでした。